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Column コラム

【2026年版(前編)】Webアクセシビリティを実践しよう!〜AI時代のWebアクセシビリティ〜

Webアクセシビリティは「特別な対応」ではなくなっている Webアクセシビリティという言葉を聞くと、「障害のある人のための特別な対応」「大きな企業や自治体だけが取り組むもの」と感じる方も多いかもしれません。 しかし、現在のWebアクセシビリティは、特定の人だけのためのものではなく、Webサイトを利用するすべての人に関係する品質のひとつになっています。

たとえば、スマートフォンの小さな画面で文字が読みづらい、屋外で画面が見えにくい、マウスが使えずキーボードだけで操作したい、動画を音声なしで見たい、フォームの入力エラーが分かりにくい、といった経験は多くの人にあります。 これらは一時的な不便かもしれませんが、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、認知特性、高齢による見えづらさ・操作しづらさがある方にとっては、Webサイトを利用できるかどうかに直結する重要な問題です。

また、2024年4月から改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者にも合理的配慮の提供が義務化されました。Webサイトそのものについて「すべての民間企業が直ちにJISやWCAGへ完全適合しなければならない」という意味ではありませんが、企業や団体がWebを通じて情報提供や申し込み受付を行う以上、誰もが利用しやすい状態に近づけていくことは、ますます重要になっています。 さらに、AIの進化によって、Webサイトの情報は人だけでなくAIにも読み取られ、要約され、音声で案内される時代になりました。AIが内容を正しく理解するためにも、見出し、本文、画像の代替テキスト、フォーム、リンクなどが適切に構造化されていることが重要です。 つまり、Webアクセシビリティは「一部の人のための特別対応」ではなく、利用者に正しく情報を届け、迷わず操作してもらうための基本的なWeb品質です。 この記事では、AI時代におけるWebアクセシビリティの考え方と、実際にどのように検査・改善していけばよいのかを、できるだけ分かりやすく紹介します。

2. Webアクセシビリティとは何か

Webアクセシビリティとは、年齢や障害の有無、利用している環境に関係なく、できるだけ多くの人がWebサイトやWebサービスを利用できるようにする考え方です。

「アクセシビリティ」という言葉には、「近づきやすさ」「利用しやすさ」といった意味があります。Webアクセシビリティの場合は、Webサイトに掲載された情報を読めること、目的のページへ移動できること、フォームを入力できること、ボタンを押せること、動画や画像の内容を理解できることなどが含まれます。

Webサイトは、会社案内、商品紹介、採用情報、お問い合わせ、予約、申し込み、行政手続き、学校からのお知らせなど、さまざまな場面で使われています。だからこそ、見た目がきれいであることだけでなく、誰にとっても使いやすい状態になっていることが大切です。

2-1. 誰もがWebサイトを使えるようにする考え方

Webアクセシビリティは、「すべての人がまったく同じ方法でWebサイトを使えるようにする」という意味ではありません。

大切なのは、利用者がそれぞれの方法で情報にたどり着き、必要な操作ができるようにすることです。

たとえば、目で画面を見ることが難しい人は、スクリーンリーダーという読み上げソフトを使ってWebサイトの内容を確認します。マウスを使うことが難しい人は、キーボードだけでリンクやボタンを操作します。音声を聞くことが難しい人は、字幕や文字情報によって動画の内容を理解します。

このように、利用者によってWebサイトの使い方は異なります。

そのため、Webサイトを作る側は、見た目だけで判断するのではなく、次のような視点を持つ必要があります。

  • 読み上げソフトでも内容が伝わるか
  • キーボードだけで操作できるか
  • 色だけに頼らず情報が伝わるか
  • 画像の内容が文字でも説明されているか
  • フォームの入力内容やエラーが分かりやすいか
  • スマートフォンでも無理なく操作できるか

これらは、特別な機能を追加するというよりも、Webサイトを正しく、分かりやすく作るための基本です。

2-2. 見えない・聞こえない・操作しづらい・理解しづらい人への配慮

Webアクセシビリティで考えるべき利用者は、視覚障害のある人だけではありません。

Webサイトを利用するうえで困難を感じる状況には、さまざまなものがあります。

たとえば、見えない・見えにくい人にとっては、画像だけで説明されている情報や、文字と背景のコントラストが低いデザインは大きな障壁になります。画像に代替テキストがなければ、スクリーンリーダーではその画像が何を表しているのか分かりません。

聞こえない・聞こえにくい人にとっては、音声だけで説明される動画や、字幕のない配信コンテンツは内容を理解しにくくなります。動画を掲載する場合は、字幕やテキストによる説明があると、より多くの人に情報が伝わります。

操作しづらい人にとっては、マウス操作を前提にしたメニューや、小さすぎるボタン、キーボードで移動できないフォームなどが障壁になります。キーボード操作やタッチ操作でも問題なく使えることが重要です。

理解しづらい人にとっては、専門用語ばかりの文章、複雑なページ構成、分かりにくいエラーメッセージなどが負担になります。見出しを適切に付ける、文章を分かりやすくする、手続きの流れを明確にすることもアクセシビリティの一部です。

つまり、Webアクセシビリティは、目が見えるかどうかだけの問題ではありません。

  • 情報を理解できるか
  • 目的の場所へ移動できるか
  • 必要な操作ができるか
  • 途中で迷わず完了できるか

こうした利用全体に関わる考え方です。

2-3. 高齢者、スマートフォン利用者、一時的に不自由な人にも関係する

Webアクセシビリティは、障害のある人だけに関係するものではありません。

たとえば、高齢になると、小さな文字が読みづらくなったり、細かいボタンを押しにくくなったり、長い文章を読むのが負担になったりすることがあります。文字サイズ、行間、コントラスト、ボタンの大きさ、分かりやすい導線は、高齢者にとっても重要です。

また、スマートフォンでWebサイトを見る人にとっても、アクセシビリティは大きく関係します。画面が小さい、屋外で画面が見えにくい、片手で操作している、通信環境が悪いなど、スマートフォン利用にはさまざまな制約があります。

さらに、けがをして片手が使えない、眼鏡を忘れて文字が見えにくい、騒がしい場所で動画の音声が聞こえない、子どもを抱きながらスマートフォンを操作している、といった一時的な状況もあります。

このような場面では、アクセシビリティに配慮されたWebサイトほど使いやすくなります。

たとえば、文字が読みやすい、ボタンが押しやすい、リンクの意味が分かりやすい、動画に字幕がある、フォームの入力エラーが具体的に表示される、といった工夫は、多くの利用者にとってメリットがあります。

Webアクセシビリティは、限られた人のための対応ではなく、すべての人にとって使いやすいWebサイトを作るための土台です。

企業サイト、採用サイト、自治体サイト、学校サイト、病院サイト、ECサイトなど、どのようなWebサイトであっても、アクセシビリティを意識することで、情報が届く人を増やし、利用者の離脱を減らし、信頼性の向上にもつながります。

3. なぜ今、Webアクセシビリティ対応が重要なのか

Webアクセシビリティは、以前から大切な考え方として知られていました。しかし近年は、単なる「望ましい配慮」ではなく、企業や団体がWebサイトを運営するうえで、より現実的に取り組むべきテーマになっています。

その背景には、法律やガイドラインの動き、スマートフォン利用の一般化、高齢化、行政手続きや予約・申し込みのオンライン化、そしてAIによる情報利用の広がりがあります。

Webサイトは、会社案内や広報だけでなく、問い合わせ、採用応募、資料請求、予約、購入、行政手続きなど、さまざまな行動の入り口になっています。だからこそ、必要な情報にたどり着けない、フォームが使えない、内容が読み取れないという状態は、利用者にとって大きな不便になります。

3-1. 2024年の障害者差別解消法改正と合理的配慮

日本では、2024年4月1日から改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者にも「合理的配慮の提供」が義務化されました。

合理的配慮とは、障害のある人から、社会的なバリアを取り除いてほしいという意思が示された場合に、事業者側が過重な負担にならない範囲で必要な対応を行うことです。

たとえば、窓口での説明を筆談で行う、資料を見やすい形式で渡す、段差がある場所で移動を手伝う、といった対応が合理的配慮にあたります。

Webサイトにおいても、問い合わせフォームが使いづらい、PDFの内容が読み上げソフトで読めない、画像だけで重要な情報が掲載されている、といった場合には、利用者が情報を得たり手続きをしたりするうえで障壁になる可能性があります。

もちろん、Webサイトのすべての問題が直ちに法律違反になるという単純な話ではありません。しかし、企業や団体がWebを通じて情報提供や申し込み受付を行っている以上、利用できない人をできるだけ減らしていく姿勢は、これまで以上に重要になっています。

3-2. Webアクセシビリティそのものは義務化されたのか

ここで注意したいのは、「民間事業者にも合理的配慮が義務化された」ということと、「すべてのWebサイトが直ちにJIS X 8341-3やWCAGに完全適合しなければならない」ということは、同じ意味ではないという点です。

Webアクセシビリティの確保は、合理的配慮を提供しやすくするための「環境の整備」として考えられます。

たとえば、最初から見出し構造が整理され、画像に代替テキストがあり、フォームがキーボードでも操作でき、エラー表示が分かりやすいWebサイトであれば、個別の問い合わせや困りごとが発生しにくくなります。

つまり、Webアクセシビリティ対応は、問題が起きたときにその場で個別対応するためだけのものではありません。あらかじめ多くの人が使える状態にしておくことで、利用者にも運営者にも負担を減らす取り組みです。

特に、自治体や公共機関のWebサイトでは、JIS X 8341-3に基づく対応や、総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン」に沿った取り組みが求められてきました。

民間企業であっても、公共性の高い情報を扱うサイト、生活に関わるサービス、医療・福祉・教育・金融・交通・採用などのサイトでは、Webアクセシビリティを意識した設計と運用が重要です。

3-3. 公共サイト・自治体・学校・病院・企業サイトで求められる対応

Webアクセシビリティ対応が特に重要になるのは、多くの人が利用するWebサイトです。

たとえば、自治体サイトでは、防災情報、子育て支援、福祉、税金、各種手続き、イベント情報など、生活に必要な情報が掲載されています。必要な情報にアクセスできないことは、単なる不便ではなく、生活上の不利益につながる場合があります。

学校や大学のWebサイトでは、入試情報、授業情報、保護者向けのお知らせ、学生支援、休講情報、証明書発行などが掲載されます。学生本人だけでなく、保護者、教職員、地域の人など、さまざまな人が利用します。

病院や福祉施設のWebサイトでは、診療時間、予約方法、受診の流れ、アクセス、相談窓口などが重要です。体調が悪い人や高齢者、付き添いの家族が利用することも多いため、分かりやすく、迷わず使えることが求められます。

企業サイトでも、商品やサービスの紹介だけでなく、問い合わせ、資料請求、採用応募、予約、購入などの機能を持つことが増えています。これらの導線が使いづらい場合、機会損失にもつながります。

また、Webサイト本体だけでなく、PDF、動画、SNS投稿、メールマガジン、採用資料、申込フォームなど、周辺のコンテンツにも注意が必要です。

たとえば、Webページは読みやすくても、重要な案内が画像化されたPDFだけで提供されている場合、読み上げソフトでは内容を理解しにくいことがあります。動画に字幕がない場合、音声を聞けない人には内容が伝わりません。

Webアクセシビリティは、サイト制作時だけで完了するものではなく、日々の情報発信や更新業務の中でも継続して意識する必要があります。

3-4. 「対応していないリスク」から「選ばれるための品質」へ

Webアクセシビリティ対応は、法律やガイドラインへの対応という面だけで考えると、どうしても「やらなければならないこと」と受け止められがちです。

しかし、本来のWebアクセシビリティは、利用者に情報を正しく届け、目的の行動を迷わず完了してもらうための品質改善です。

文字が読みやすい、リンクの意味が分かりやすい、フォームが入力しやすい、エラーの理由が具体的に表示される、スマートフォンでも操作しやすい。こうした改善は、障害のある人だけでなく、すべての利用者にとってメリットがあります。

また、Webアクセシビリティに配慮されたサイトは、検索エンジンやAIにも内容を理解されやすくなります。見出し構造が整理され、画像に代替テキストがあり、リンクやフォームが適切に設計されているWebサイトは、人にも機械にも伝わりやすいWebサイトです。

これからのWebサイトでは、「見た目がきれい」「情報量が多い」だけでは十分ではありません。

誰にとっても使いやすく、必要な情報にたどり着きやすく、安心して問い合わせや申し込みができることが、企業や団体の信頼性にもつながります。

Webアクセシビリティは、対応していないことによるリスクを減らすだけでなく、利用者から選ばれるためのWeb品質として考えるべき時代になっています。

4. 最近のWebアクセシビリティの動向

Webアクセシビリティは、以前から重要なテーマでしたが、近年はさらに注目度が高まっています。

その理由は、法律やガイドラインの整備が進んでいることに加え、スマートフォンでの利用が当たり前になったこと、PDFや動画、SNSなどWebページ以外の情報発信が増えたこと、そしてAIによる情報利用が広がっていることにあります。

Webサイトを作る側は、「とりあえずページが見られればよい」という考え方から一歩進んで、誰が、どのような環境で、どのような方法で情報にアクセスするのかを考える必要があります。

4-1. WCAG 2.2の登場と新しい達成基準

Webアクセシビリティの国際的な基準として広く使われているものに、WCAGがあります。

WCAGは「Web Content Accessibility Guidelines」の略で、W3Cが策定しているWebコンテンツのアクセシビリティに関するガイドラインです。

2023年10月には、WCAG 2.2がW3C勧告として公開されました。WCAG 2.2では、WCAG 2.1から9つの達成基準が追加され、視覚障害、肢体不自由、認知・学習障害などのある利用者にとって、より使いやすいWebコンテンツを作るための考え方が補強されています。

追加された内容には、キーボード操作時のフォーカスが隠れないようにすること、ドラッグ操作が難しい人のために代替手段を用意すること、ログインや入力時に認知的な負担を減らすこと、ヘルプへの導線を分かりやすくすることなどが含まれます。

これらは、特別な利用者だけに関係するものではありません。

たとえば、スマートフォンで操作しているときにボタンが押しづらい、入力フォームでエラーの直し方が分からない、画面上でどこを操作しているのか分かりにくい、といった問題は、多くの人が経験するものです。

WCAG 2.2は、こうした実際の利用場面に近い課題をより重視した内容になっています。

なお、WCAG 2.2では、従来のWCAG 2.0や2.1の考え方が大きく変わったわけではありません。基本となる「知覚可能」「操作可能」「理解可能」「堅牢」という4つの原則は引き続き重要です。

そのうえで、現在のWeb利用環境に合わせて、より具体的な確認項目が追加されたと考えると分かりやすいでしょう。

4-2. JIS X 8341-3:2016とWCAGの関係

日本国内でWebアクセシビリティを考えるときによく使われる規格が、JIS X 8341-3:2016です。

JIS X 8341-3:2016は、日本工業規格として定められたWebコンテンツのアクセシビリティ規格です。正式には「高齢者・障害者等配慮設計指針-情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス-第3部:ウェブコンテンツ」という名称です。

JIS X 8341-3:2016は、WCAG 2.0と国際規格であるISO/IEC 40500:2012に基づく内容と整合した規格として位置づけられています。

つまり、日本国内でJIS X 8341-3:2016への対応を考えることは、国際的なWebアクセシビリティ基準であるWCAGの考え方に沿ってWebサイトを改善することでもあります。

ただし、現在ではWCAG 2.1やWCAG 2.2も公開されています。そのため、公共サイトや企業サイトでWebアクセシビリティを高めていく場合は、JIS X 8341-3:2016を基本にしながら、WCAG 2.1やWCAG 2.2で追加された観点も確認していくことが望ましいです。

たとえば、スマートフォン操作、タッチ操作、入力フォームの分かりやすさ、フォーカス表示、認知的な負担への配慮などは、近年のWeb利用では特に重要になっています。

規格名だけを見ると難しく感じますが、実務上は「利用者が情報を受け取れるか」「操作できるか」「理解できるか」「支援技術でも正しく扱えるか」を確認するための基準と考えるとよいでしょう。

4-3. デジタル庁「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」の活用

Webアクセシビリティに初めて取り組む場合は、デジタル庁が公開している「ウェブアクセシビリティ導入ガイドブック」が参考になります。

このガイドブックは、Webアクセシビリティの基本的な考え方や、取り組むうえでのポイントを分かりやすく整理した資料です。行政機関だけでなく、企業や団体がWebアクセシビリティを理解するうえでも参考になります。

Webアクセシビリティというと、すぐにJISやWCAGの達成基準を細かく確認しなければならないと考えがちです。

しかし、最初からすべての技術的な基準を理解しようとすると、制作担当者や広報担当者にとって負担が大きくなります。

その点、導入ガイドブックは、なぜWebアクセシビリティが必要なのか、どのような人が困るのか、どのような点に注意すればよいのかを把握する入口として使いやすい資料です。

また、2025年10月には、デジタル庁の関連資料として「ウェブアクセシビリティ広報向けガイドブック」も公開されています。これは、Webサイトを構築した後に、日々追加されるお知らせ、画像、PDF、動画、SNS投稿などのコンテンツで、どのようにアクセシビリティを確保するかに焦点を当てた資料です。

Webアクセシビリティは、制作会社やシステム担当者だけが考えるものではありません。

広報担当者、採用担当者、総務担当者、自治体や学校の情報発信担当者など、日々WebサイトやSNSを更新する人にも関係します。

そのため、社内や組織内でWebアクセシビリティの共通理解を作るために、デジタル庁のガイドブックを活用することは有効です。

4-4. スマートフォン時代に求められるアクセシビリティ

現在、多くの人がスマートフォンでWebサイトを閲覧しています。

スマートフォンでの利用は、パソコンとは異なる制約があります。画面が小さい、指で操作する、屋外で画面を見る、片手で操作する、通信環境が不安定な場合があるなど、利用環境はさまざまです。

そのため、スマートフォン時代のWebアクセシビリティでは、次のような点が特に重要になります。

  • 文字が小さすぎないか
  • 行間や余白が十分にあるか
  • ボタンやリンクが押しやすい大きさになっているか
  • リンク同士が近すぎないか
  • 横スクロールしないか
  • 入力フォームが使いやすいか
  • エラー表示が分かりやすいか
  • メニューをキーボードや支援技術でも操作できるか

特に、フォームの入力はスマートフォンで大きな負担になりやすい部分です。

入力項目が多すぎる、必須項目が分かりにくい、エラーの理由が表示されない、エラー後にどこを直せばよいか分からない、といった状態では、利用者は途中で離脱してしまいます。

問い合わせ、予約、購入、採用応募などの成果につながるページでは、スマートフォンでの操作性を必ず確認しましょう。

また、ハンバーガーメニューやモーダルウィンドウ、アコーディオンなど、スマートフォンサイトでよく使われるUIにも注意が必要です。見た目上は操作できていても、キーボード操作やスクリーンリーダーでは使いにくい場合があります。

スマートフォン対応は、単に画面幅に合わせてレイアウトを変えるだけではありません。小さな画面でも情報を理解しやすく、指でも操作しやすく、支援技術でも扱いやすい状態にすることが重要です。

4-5. PDF・動画・SNS投稿など、Webページ以外のアクセシビリティ

Webアクセシビリティというと、HTMLで作られたWebページだけを想像しがちです。

しかし、実際の情報発信では、PDF、動画、画像、SNS投稿、メールマガジン、申し込みフォーム、外部サービスなど、Webページ以外のコンテンツも多く使われています。

たとえば、自治体や学校、企業のWebサイトでは、重要なお知らせや申込書類がPDFだけで掲載されていることがあります。

PDFが画像として作られている場合、スクリーンリーダーで読み上げられなかったり、文字検索ができなかったりすることがあります。見た目では読めるPDFでも、支援技術では内容を取得できない場合があるため注意が必要です。

動画については、音声だけで重要な内容を説明している場合、聞こえない・聞こえにくい人には情報が伝わりません。字幕、テキストでの説明、必要に応じた音声解説などを用意することで、より多くの人が内容を理解できるようになります。

SNS投稿でも、画像内に文字を入れる場合は注意が必要です。画像だけに重要な情報を入れると、読み上げソフトでは内容が伝わりにくくなります。投稿本文にも同じ内容を記載する、画像に代替テキストを設定するなどの工夫が必要です。

また、外部のフォームサービスや予約システム、決済サービスを利用している場合も、その画面がアクセシブルでなければ、利用者は手続きを完了できません。

Webアクセシビリティを考えるときは、Webサイト本体だけでなく、利用者が実際に情報を受け取り、行動を完了するまでの全体を確認することが大切です。

ページは見やすいのに、PDFが読めない。説明動画はあるのに字幕がない。SNSでは画像だけで告知している。申し込みフォームだけが操作しづらい。

このような状態では、利用者にとっては十分に使いやすいとは言えません。

最近のWebアクセシビリティでは、単独のページだけでなく、情報発信全体のアクセシビリティを考えることが求められています。

5. AI時代にWebアクセシビリティは不要になるのか

AIの進化によって、Webサイトの利用方法は大きく変わりつつあります。

文章をAIが要約してくれる、Webページの内容を音声で説明してくれる、分からない言葉をかみ砕いて説明してくれる、音声で質問するとAIが答えてくれる。こうした機能は、視覚障害のある人、高齢者、長い文章を読むのが苦手な人、外国語の情報を理解したい人などにとって、大きな助けになる可能性があります。

では、AIが進化すれば、Webアクセシビリティへの対応は不要になるのでしょうか。

結論から言えば、AI時代になってもWebアクセシビリティは不要にはなりません。むしろ、AIがWebサイトの内容を正しく理解し、利用者に正確に伝えるためには、これまで以上にWebサイト側の構造や情報設計が重要になります。

5-1. AIによる要約・読み上げ・音声対話で便利になること

AIによって、Webサイトの情報を利用する方法は広がっています。

たとえば、長いページをAIに要約してもらえば、重要な内容を短時間で把握しやすくなります。専門用語が多い文章でも、AIに分かりやすく言い換えてもらうことで、内容を理解しやすくなる場合があります。

また、音声読み上げや音声対話と組み合わせることで、画面を見なくても情報を得たり、キーボード入力が難しい状況でも質問したりできるようになります。

こうした機能は、Webアクセシビリティの観点から見ても大きな可能性があります。

  • 長い文章を短く要約できる
  • 難しい言葉を分かりやすく説明できる
  • 音声でWebサイトの内容を確認できる
  • 外国語の情報を翻訳して理解できる
  • 利用者の状況に合わせて説明の仕方を変えられる

これまでWebサイトの情報にアクセスしづらかった人にとって、AIは情報取得を助ける有力な手段になります。

しかし、AIが便利になることと、Webサイト側のアクセシビリティ対応が不要になることは別の話です。

AIが正しく情報を読み取るためには、元になるWebサイトの情報が正しく整理されている必要があります。

5-2. AIがあってもフォーム入力や操作の問題は残る

AIは、Webページの内容を要約したり、文章を読み上げたり、分かりやすく説明したりすることができます。

しかし、Webサイトの利用は「読む」だけではありません。

実際のWebサイトでは、問い合わせフォームを入力する、予約日時を選択する、商品をカートに入れる、資料請求を送信する、採用応募をする、会員登録をする、といった操作が必要になります。

こうした操作部分に問題がある場合、AIが内容を説明してくれても、利用者は目的を完了できません。

たとえば、次のような問題があると、AIだけでは解決が難しい場合があります。

  • フォームの入力欄にラベルが設定されていない
  • エラーが出ても、どの項目を直せばよいか分からない
  • キーボードだけでボタンに移動できない
  • カレンダー形式の予約画面が支援技術で操作しづらい
  • 画像ボタンに代替テキストがなく、何のボタンか分からない
  • モーダルウィンドウを閉じられない
  • 必須項目が色だけで示されている

Webサイトの目的は、情報を読んでもらうことだけではありません。問い合わせ、申し込み、購入、予約、応募など、利用者が行動を完了できることが重要です。

AIが発達しても、Webサイトそのものが操作しづらければ、利用者は途中で止まってしまいます。

そのため、AI時代においても、フォーム、ボタン、リンク、メニュー、エラー表示などのアクセシビリティ対応は欠かせません。

5-3. AIの誤読を防ぐには、正しいHTML構造が重要

AIがWebサイトの情報を理解するとき、ページに書かれた文章だけでなく、見出し、リスト、表、画像の代替テキスト、リンク、フォームのラベルなど、さまざまな情報を手がかりにします。

そのため、HTMLの構造が適切でないと、AIがページの内容を誤って理解する可能性があります。

たとえば、見た目だけを大きくした文字を見出しのように使っていても、HTML上で見出しタグになっていなければ、ページ構造が伝わりにくくなります。

また、画像の中に重要な文字情報が入っているのに代替テキストが設定されていなければ、AIやスクリーンリーダーはその情報を正しく取得できない場合があります。

表の見出しが正しく設定されていない場合、どの数値が何を示しているのか分かりにくくなります。リンクテキストが「こちら」「詳しくはこちら」ばかりの場合、リンク先の意味も判断しにくくなります。

AIの誤読を防ぐためには、次のような基本が重要です。

  • ページの内容に合った見出し構造にする
  • 画像には適切な代替テキストを設定する
  • リストや表は意味に合ったHTMLで記述する
  • リンクテキストだけで遷移先が分かるようにする
  • フォームの入力欄とラベルを正しく関連付ける
  • ボタンやメニューの役割が分かるようにする

これは、従来のWebアクセシビリティで求められてきた内容とほとんど同じです。

つまり、Webアクセシビリティに配慮したHTMLは、スクリーンリーダーだけでなく、AIにとっても理解しやすい構造になります。

5-4. AIに理解されやすいWebサイトは、人にも使いやすい

AIに理解されやすいWebサイトとは、情報の意味や構造が整理されたWebサイトです。

たとえば、見出しが適切に付けられているページは、AIにとって内容を把握しやすいだけでなく、人にとっても読みやすくなります。

箇条書きが適切に使われているページは、要点をつかみやすくなります。フォームのラベルが分かりやすいページは、AIや支援技術だけでなく、一般の利用者にとっても入力しやすくなります。

また、リンクテキストが具体的であれば、利用者は次にどこへ進めばよいか判断しやすくなります。画像に代替テキストがあれば、画像が表示されない環境や読み上げ環境でも内容が伝わります。

このように、AIに理解されやすいWebサイトを目指すことは、人にとっても使いやすいWebサイトを作ることにつながります。

近年は、検索エンジンだけでなく、生成AI、音声アシスタント、ブラウザの要約機能など、Webサイトの情報を機械が解釈して利用者に届ける場面が増えています。

そのときに重要になるのは、派手なデザインや複雑な演出だけではありません。

誰が見ても、機械が読んでも、情報の意味が分かるように整理されていることです。

Webアクセシビリティは、人のための配慮であると同時に、AI時代の情報伝達の基盤にもなっていきます。

5-5. AI時代こそ、セマンティックHTMLとアクセシビリティが重要になる

セマンティックHTMLとは、文章や部品の意味に合ったHTMLを使ってWebページを作ることです。

見出しには見出しタグを使う、段落には段落タグを使う、一覧にはリストタグを使う、表にはテーブルタグを正しく使う、ボタンにはボタン要素を使う。こうした基本的な実装が、Webアクセシビリティの土台になります。

見た目だけを整えるのであれば、どの要素を使っても似たような表示にできるかもしれません。

しかし、スクリーンリーダーや検索エンジン、AIがページを理解するときには、HTMLの意味が重要になります。

たとえば、見出しが正しく設定されていれば、ページ全体の構成を把握しやすくなります。フォームのラベルが正しく関連付けられていれば、何を入力する欄なのか分かります。ボタンやリンクが適切に実装されていれば、キーボードや支援技術でも操作しやすくなります。

AI時代になると、利用者は必ずしもWebページを上から順番に読むとは限りません。AIに要約してもらったり、音声で質問したり、必要な部分だけを抽出して確認したりする機会が増えていきます。

そのとき、Webサイトの情報が正しく構造化されていなければ、AIが重要な情報を見落としたり、誤って解釈したりする可能性があります。

つまり、AI時代のWebアクセシビリティでは、表面的な見た目だけでなく、Webサイトの中身がどのように構造化されているかがますます重要になります。

セマンティックHTMLを意識し、アクセシビリティに配慮してWebサイトを作ることは、障害のある人への配慮にとどまりません。

それは、利用者、検索エンジン、AIのすべてに対して、情報を正しく届けるための基本です。

AIが進化する時代だからこそ、Webサイト側は「AIが何とかしてくれる」と考えるのではなく、AIにも人にも正しく伝わる情報設計を行うことが求められます。

後編へ続きます。

ヒニアラタ編集部 監修: 馬庭 吾以千

ヒニアラタ編集部では地方の中小企業様のWeb活用をお手伝いするため、私たちが持っている専門知識を「コラム」という形で分かりやすく公開しています。 私たち自身が地方の企業であるからこそ分かること、感じることがあると思っています。

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